社長コラム
2015年02月23日 19:00
こんにちわ!最近、日本人ジャーナリスト:後藤健二さんがISISに殺害され日本人もイスラム過激派の攻撃対象に挙げられる様になり、マレーシアにロングステイ・移住を計画されている方からマレーシアは大丈夫ですか?と質問される事があり私なりに色々と考えて見ました。
まずマレーシアでは、マレー人と言う原住民(ブミプトラと呼ばれます)は皆イスラム教徒で、約3,000万人の総人口の6割強に上ります。次に人口比が高いのが中国系住民で、総人口の約23%程度。中国系住民は仏教徒が一番多く、次がクリスチャン、道教という順で、イスラム教に改宗した中国人もいます。第三の人種がインド系住民で、大半はヒンズー教徒ですが、クリスチャンやシーク教徒もかなりいます。
マレーシアは、イスラム教を国教としていますが、信教の自由も認められ各人種が好きな宗教を実践しているのが実態です。中国系住民やインド系住民は、19世紀前半からマレーシアに移住して来ていますので、多民族・多宗教の社会は既に200年程の歴史があると言えます。マレーシアのモスリムは穏健派として知られています。
またマレーシアは、1787年から1957年まで約170年間英国の植民地でしたので、英連邦国家との結びつきが大変強く、政府や大手企業のエリートはモスリムを含めて、ほぼ例外無く英国、オーストラリア、米国等で教育を受けています。マレーシアのモスリム・リーダーは欧米社会・価値観を良く理解しています。(多分、日本のリーダー以上に)彼らは、欧米社会と良い関係を築く事で受ける経済的なメリットも良く知っています。
マレーシアは天然資源を豊富に持つ豊かな国です。一人当たりのGNPも2013年にはUS$10,000を既に超え、2020年を目標に中進国家から先進国家を目指している最中です。イスラム教徒の原住民を優遇するブミプトラ政策により、マレーシアのモスリムは多大な経済的メリットを受けて来ました。モスリムの多くは教育レベルが上がり、豊かになっています。高い教育を受け、豊かになったマレーシアのモスリムが、ISISの様な過激派に走るでしょうか?私の意見は、「一部の狂信的なモスリム以外は、明らかにNoです」
私は、逆に混乱を続けるイスラム世界の中で、今後マレーシアがイスラムの先進国家として、規範的・模範的なイスラムのあるべき姿を提案して行くのでは無いかと見ています。イスラム金融の分野で世界の先端を走り、ハラル食品の認定でもいち早く国際規格を打ち出しているのを見てもその動きが見て取れます。
また多民族・多宗教の長い歴史があると、当然人種や宗教を超えた結婚が繰り返され、同じ親族内にモスリム・クリスチャン・仏教・ヒンズー教の人が入り混じる社会が出来上がっています。現地人の妻(クリスチャン)を持つ私自身も妻の親族には上記宗教が全て入っています。この様な社会構造になっているマレーシアなので、政府や政治家が一番警戒するのが、民族間・宗教間の対立で、対立の兆しが少しでも見えると政府やマスコミやすばやい対応・対策を取ります。
私が長くマレーシアに住み関心しているのが、政府の国内治安問題に関する情報収集能力です。内務省の傘下に各都市、各地域から情報を収集する秘密警察の様な組織があり、それはKampungと呼ばれる田舎の村落の中まで張り巡らされいます。マレーシアでもイスラム教徒が多いので一部過激な行動に出ようとする人達の動きもありましたが、それらは皆早い段階で押さえ込まれて来ました。今までマレーシア国内でテロ行為がほぼ皆無で来たのは、この情報網の貢献が大きいと考えています。
但し良い所ばかりでなく、マレーシアにも出入国管理の弱点があったと考えます。私も良く日本を含め海外に出張して来ましたが、入国時のパスポートチェック、セキュリテイチェック等は、本当に甘かったと思います。マレーシア人の寛容で、細かい事を気にしない国民性もあったと思いますが、この弱点が国際的なテロリストや犯罪者に狙われるきっかけになって来たと思います。マレーシア航空機失踪事件、ボルネオ島のフィリピン過激派のよる侵入等には、この弱点が関係していたと思います。
2014年はマレーシアでは航空機事故が相次ぎ、さすがにマレーシア政府もかなり出入国管理を厳しくし始めています。マレーシアが、今後イスラムの先進国家となる為にはクリアーしなくてはならないハードルと思います。
今日の話の結論として、私はマレーシアでイスラム過激派によるテロ行為を余り心配する必要は無いと思います。我々マレーシアに長く住む日本人人や現地人もマレーシア国内でのテロのリスクに付いて余り肌で感じる事はありません。
もちろんマレーシアにも狂信的なイスラム教徒は一部おり、ISISに参加しているマレーシア人も100名前後居ると報道されています。但しその様なテロリストが活動する場所としては、戦闘を繰り返すイスラム国内を除いて、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、バリ島等の非イスラム圏が多いと思います。2020年の東京オリンピックを前に外国人観光客誘致に注力する日本国内もテロリストのターゲット地域に成らないとは言えない気がします。