社長コラム
2014年10月14日 09:30
10月10日にナジブ・ラザック首相が2015年の予算教書を発表しました。
“資本経済“と”国民経済“のバランスを取る事を主眼にしたと首相が述べています。資本経済とは、経済成長率、一人当たり所得、資本市場の充実、企業収益等を意味し、国民経済とは生活費、世帯所得、教育機会、雇用と生活水準の向上、治安問題を具体的に意味するとしています。
主だった政策としては以下のポイントが挙げられます。
1)物品サービス税(GST)の免除:2015年4月1日よりマレーシアでも日本の消費税に相当する物品サービス税(6%、GST)がスタートしますが、日常品のガソリン、天然ガス、パン、コーヒーと紅茶、指定薬、書籍等は課税しないとしています。
2)GST収入の内、1,500億円分は低所得者に補助金として還元する。
3)大型公共インフラ工事としてクアラルンプール首都圏の高速道路3本新設で約3,600億円、MRT2号線(大量輸送電車網2号線)新設で7,500億円、LRT3号線(軽便鉄道3号線)新設で3,000億円予算計上。
4)143,000戸の低所得者向け住宅の建設、25歳から40歳までで世帯収入が月RM10,000(約33万円以下)の家庭に対してRM500,000までの住宅ローン供給
5)約3,000億円の予算を取り、警察官を11,757名増員し、14箇所の地域警察本部を新設。
6)地方の開発援助として、サバとサラワク州の過疎地域の電力と水道供給で500億円、更にサバとサラワク州内の道路整備で300億円の予算計上。
7)個人所得税の低減(現在の最大25%から所得に応じて1~3%減税)
8)法人所得税の低減(現在の最大24%から1%の減税)
税制の基本政策として、消費税を導入する代わりに所得税を下げ、低所得者には補助金で対応しようとする政府の姿勢が伺えます。更に、ガソリン、米、小麦粉、食用油に対する補助金を徐々に削減しており、財政の均衡を図ろうとしています。
現在、マレーシアの国の借金は対GNP比で約53%でその比率は毎年低減傾向にあります。現在対GNPで3%程度の財政赤字となっていますが、2020年までには財政収支を均衡させようとしています。
経済成長率は、2014年前半は6.3%を達成し大方の予想を上回りました。やはり政府の大型公共投資(特にKL首都圏の鉄道網工事)が引き金になり、民間部門の投資が非常に活発になっている事の結果と思います。2014年通年でも5.5~6%の経済成長を達成すると思われます。
物価は、最近のガソリンや電気代への補助金カット等で上昇傾向にあり、2014年は2.5%程度のインフレ率で、2015年は消費税導入で3-3.5%程度のインフレ率と予想されます。
2020年を目標に中進国家から先進国家入りを目指す中でマレーシアの税制システムも変化している、ただしマレーシアらしい貧しい人への配慮も忘れていない予算と感じます。
不動産市場に関して言えば、1)政治も安定し高い経済成長が当面維持できそうなファンダメンタルがある、2)2015年から消費税が導入され、物件の購入には課税は無いといえ、物件供給する開発会社からすれば原材料に課税となるので、販売価格を上げざるを得ない。という背景により、引き続きじりじりと上昇するものと思われます。
これからもマレーシア経済の動向には、注視して行こうと思います。